オートレースの世界には、数々の伝説を築き上げてきた名選手たちが存在します。
本ブログでは、そんな“時代を象徴するレーサー”たちの歴史や戦績、人柄を掘り下げて紹介していくシリーズをスタートします。
記念すべき第一回は、圧倒的な勝率と連勝記録でファンを魅了し続ける鈴木圭一郎選手。
幼い頃から培った卓越したバイク技術と、プロデビュー後わずか数年でSGタイトルを総なめにした驚異的な実績を持つ彼の軌跡を、余すところなくお伝えします。
【After the final】鈴木圭一郎 最年少グランドスラム達成直後の裏側https://t.co/hqgAjX0biI pic.twitter.com/zi2r8wrXEA
— オートレース【公式】 (@auto_official) August 17, 2025
幼少期から芽生えた「速さへの情熱」
1994年11月30日、東京都葛飾区に生まれた鈴木圭一郎選手。
彼の「速さ」への情熱は、小学2年生でポケットバイクにまたがった瞬間から始まります。
遊びではなく、明確な目標を持って走る姿は、すでに未来のトップレーサーを予感させるものでした。
小学4年生のときには「オートレーサーになりたい」という夢を口にし、川口オートレース場で開催されたSGポケバイレースで優勝。
さらに小学5年で「DAIJIRO-CUP」も制覇し、同世代の中でも群を抜く存在に成長します。
中学時代はミニバイク競技で全国を転戦し、アジア国別対抗戦にも出場。
10代前半にして、すでに世界を相手に戦う経験を積んでいました。

まさにオートレースの神童
オートレーサーへの道 — 浜松からの挑戦
高校卒業後、鈴木選手は第32期としてオートレーサー養成所に入所。
卒業時には首席という栄誉を得て、2013年、浜松オートレース場からプロデビューします。
師匠は同じ浜松所属の滝沢健選手。
整備技術や走りの組み立てを一から叩き込まれ、デビュー直後から他の新人とは一線を画す結果を残しました。
初年度から数々の勝利を重ね、2016年には史上最年少で日本選手権オートレースを制覇。
この年、全日本選抜、スーパースター王座決定戦も勝ち取り、一気に「時代の寵児」として脚光を浴びます。
栄光の軌跡 — タイトルと記録の数々


鈴木圭一郎の戦績は、まさに圧巻の一言です。
- 日本選手権オートレース:2016・2017・2021年優勝
- 全日本選抜オートレース:2016〜2019、2023年優勝(通算5回)
- スーパースター王座決定戦:2016・2022・2024年優勝
- オールスターオートレース:2017・2021〜2023年優勝
これらSG(スーパーグレード)タイトルだけでなく、GⅠ・GⅡでも多数の優勝を積み重ねています。
特筆すべきは連勝記録。2024年には前人未到の18連勝を達成し、その年の年間最多勝利記録を98勝に更新。
スタートが得意なタイプではないにもかかわらず、驚異的な追い上げと安定感で他を圧倒する姿は、ファンの心を掴んで離しません。
スタイルの秘密 — 粘り強さと整備力
鈴木選手の強さを語る上で欠かせないのが、「粘りの走り」と「整備力」です。
スタート直後は中団からの展開になることが多いものの、焦らず冷静にインを突く走りで着実に順位を上げていきます。
終盤の数周で一気にトップに立つレース展開は、観客の興奮を最高潮に引き上げる名物シーン。
さらに、愛機の整備に対するこだわりも一流。エンジンや足回りの微細な調整に余念がなく、「勝てるマシン」を常に用意できる技術と信頼関係が彼の武器です。
人間・鈴木圭一郎
レース外では非常に謙虚で、勝利インタビューでも「エンジンが良かった」「整備スタッフに感謝」と仲間を称える姿勢が印象的です。
仲の良い選手には山浦博幸選手が挙げられ、師匠や仲間との絆を大切にしています。
好きな時間帯は薄暮で、地元浜松オートとの相性は抜群。ファンへのメッセージには「どんなレースでも全力で頑張ります」と繰り返し語り、走りへの誠実さがにじみ出ます。



信頼できる一面だよね
数字が語る圧倒的な実力
直近の成績も驚異的です。2025年時点で通算出走1,599回、勝率.587、2連対率.761、3連対率.859という数字は、まさに怪物級。
直近10走では6勝、2連対率は100%という完璧な安定感を誇ります。
勝率5割を超える選手はオートレース界でも極めて稀で、長年トップに居続ける難しさを考えれば、この数字がどれほど異次元かがわかります。
鈴木圭一郎|年表(主要タイトル・記録)
浜松・32期/1994-11-30※SG=最高グレード。太字はSG・主要記録。必要に応じて
2013 デビュー(浜松・32期)
- 養成所を首席で修了し、7月デビュー。(初出走:浜松)
2014–2015 台頭期/S級常連へ
- 地元・浜松を軸に勝ち星を積み上げ、上位常連に。
2016 “最年少SGV”を含む怒涛の年
- 全日本選抜(川口)優勝 SG 史上最年少&デビュー最短SGV
- 日本選手権(浜松)優勝 SG 5連勝の完全V
- スーパースター王座決定戦(川口)優勝 SG
- ムーンライトC(伊勢崎)優勝 GⅠ/川口開設記念GP優勝 GⅠ/浜松開場記念ゴールデンレース優勝 GⅠ
2017 SG二冠級の勢い継続
- オールスター(川口)優勝 SG
- 日本選手権(浜松)優勝 SG
- スピード王決定戦(山陽)優勝 GⅠ/飯塚開設記念レース優勝 GⅠ
2018 全日本選抜 大会3連覇
- 全日本選抜 優勝 SG 大会3連覇
- ウィナーズC(浜松)優勝 GⅡ/稲妻賞(伊勢崎)優勝 GⅠ/スピード王(山陽)優勝 GⅠ
2019 全日本選抜 4連覇
- 全日本選抜(川口)優勝 SG 大会4連覇
- 特別GⅠ 共同通信社杯プレミアムC 優勝 GⅠ
- スピード王決定戦(浜松)優勝/秋のスピード王(浜松)優勝 GⅠ
2020 主要タイトル複数獲得
- オーバルC(飯塚)優勝 GⅠ/秋のスピード王(浜松)優勝 GⅠ/飯塚開設記念 優勝 GⅠ
- 浜松開場記念ゴールデンレース 優勝 GⅠ
2021 SG二冠(オールスター/日本選手権)
- オールスター(川口)優勝 SG
- 日本選手権(浜松)優勝 SG
- キューポラ杯(川口)優勝 GⅠ
2022 スーパースター制覇/オールスターV
- スーパースター王座決定戦(川口)優勝 SG
- オールスター(川口)優勝 SG
2023 オールスターV/地元GⅠ制覇
- オールスター(川口)優勝 SG
- 浜松 開場記念ゴールデンレース 優勝 GⅠ/飯塚 開設記念レース 優勝 GⅠ
2024 18連勝&年間最多勝更新
- 年間最多勝 98→114 勝へ更新 記録
- 共同通信社杯プレミアムC 優勝 GⅠ/スピード王(浜松)優勝 GⅠ/令和GC(山陽)優勝 GⅠ
- スーパースター王座決定戦 優勝 SG
2025 主要GⅠ積み上げ/王者の貫禄
- 令和グランドチャンピオンC(山陽)優勝 GⅠ/浜松 開場記念ゴールデンレース 優勝 GⅠ
- ※獲得賞金や通算優勝数はシーズン進行で更新
鈴木圭一郎、悲願のグランドスラム達成
オートレース界の若きスター・鈴木圭一郎は、数々のSGタイトルを積み重ねてきましたが、ファンの間で長年待ち望まれていた「グランドスラム」をついに達成しました。
競技の歴史の中でも数少ない偉業であり、全ての条件を満たすには安定した実力と勝負強さが欠かせません。
鈴木圭一郎はデビュー以来、数々の最年少記録を塗り替えながらタイトルを獲得してきましたが、最後まで残っていたSGを制したことで、名実ともにオートレース界のトップに君臨する存在となりました。
達成の瞬間、会場は大歓声に包まれ、SNSでも祝福の声があふれ、「史上最強レーサー」の呼び声をさらに強めました。
グランドスラム達成は単なるタイトルの揃い踏みではなく、選手としての完成を意味します。
今後は、この快挙を出発点として、さらなる連覇記録や新たな伝説を作り出していくことが期待されています。
鈴木圭一郎、グランドスラム達成はどのレース?
鈴木圭一郎選手が悲願のSGグランドスラムを達成したのは、2025年8月15日に行われた伊勢崎オートレース場での第29回オートレースグランプリ(SG)優勝戦によるものでした。
当日は湿走路での難しいコンディションながらもレースを制し、5大SGすべてに優勝という偉業を成し遂げました。
この瞬間、鈴木選手は30歳258日でグランドスラム達成という、歴代最年少記録を更新しました。
記録保持者だった片平巧氏の33歳よりも約2年早い達成となりました 。
これからの展望
年齢的にもピークを迎える30歳前後の鈴木圭一郎。
SGタイトルのさらなる積み上げ、年間勝利数の更新、そして前人未到の20連勝超えといった記録への挑戦が期待されています。
彼の走りは、単なる勝負を超えて「観る者を魅了する芸術」に近い。
オートレースという競技の魅力を体現する存在として、これからも多くの人々をレース場へ、そしてネット中継の画面へと引き寄せるでしょう。
結び — 一人の天才が描く物語


鈴木圭一郎の物語は、まだ完成していません。
ポケバイから始まり、国内最高峰のオートレースで絶対王者となった彼は、これからも記録を塗り替え続けるはずです。
その走りは、ファンにとって「夢」であり、同業者にとっては「超えなければならない壁」。
そして、未来のオートレーサーたちにとっては「目指すべき頂き」そのものです。
彼が次にどんな歴史を刻むのか—その瞬間を見届けるのは、あなたかもしれません。

